現在担当している仕事

道路標識や車のナンバープレート、道路脇に設置されているオレンジ色のポール(写真参照)などに使用される「再帰反射シート」の開発を担当しています。再帰反射とは受けた光をそのまま光源にはね返す現象です。ビーズ型再帰反射シートには直径40~90ミクロンの微小な高屈折ガラスビーズが均一に多数配置されていて、これによって反射シートが夜でも明るく見えるのです。私は主にナンバープレートを担当しており、既存製品の性能アップに取り組んでいます。例えば特長である反射性能はそのまま維持しつつ、よりインクがのりやすいようにする「印刷性改良」や印刷後に貼る保護用フィルムの「透明性改良」などが主な研究テーマです。

仕事で何かを発見した瞬間

ナンバープレート用再帰反射シートは積層構造になっており、表面のトップ層、ビーズバインダー層、焦点調整層、アルミ金属蒸着層、のり層、剥離紙などから成り、各層それぞれに印刷性、透明性、反射性など求められる機能があります。私はそれぞれの性能の向上に取り組むわけですが、一つの層を改良すると、別の層で問題が生じます。逆に言うと他の層を変化させることで、別の層の問題点を解消できる可能性もあります。例えば印刷性改良に取り組んでいた際に、表面トップ層の改良に取り組んでいたのに、なかなか成果が得られなかったのですが、剥離紙を換えてみたところ、印刷性を向上できたケースがあり、「こんなところで影響するのか!」という思わぬ発見がありました。この発見を通じて多角的に事象を捉えることの重要さに気付きました。

これまでで一番印象に残っている仕事

やはり上記の印刷性改良で成果を得られた時はうれしかったですね。当初トップ層の添加剤の配合バランスをいろいろと試して、試行錯誤を繰り返した結果、ようやく目指すレベルの印刷のクオリティを得ることができました。ところがその喜びも束の間で、少し時間をおくと変色してしまい、物性がむしろ以前よりも悪い方に変わってしまったのです。「どうしてこうなるんだろう?」考えあぐねた末、少し視点を変えて他の層もいろいろといじってみました。実は印刷後に製品はロール状に巻かれており、トップ層と剥離紙は隣り合っています。そのため、物性が影響し合う可能性がありました。剥離紙もさまざまなタイプを試し、ようやく当初目指していたクオリティを実現できた時はほっとしました。このようにすべての層が影響し合っているため、それを考慮しながらベストの組み合わせを追究することが、難しさでもあり、醍醐味でもあります。

今後の目標

新製品の開発にも少しずつ参加していて、先日調査のためにインドへ出張してきました。訪問先は現地のナンバープレートを印刷する会社で、お客様が製品にどういうことを求めているのか、何を重視しているのかを実際に会って聞くことができ、課題を明確化することができました。また、現地の交通状況や気温・湿度の変化、さらに工場の工程管理の様子など、得られた情報は、開発品の品質設定に反映していきます。海外では中国の恩希愛(杭州)化工有限公司の工場での実機試作の立ち会いなど、現場サポートを行うことも少なくありません。グローバルな舞台でラインの立上げや製品改良に貢献できるのも、日本カーバイド工業ならではのエンジニアのやりがいだと思います。いつか自分の開発した製品が、世界中の街で見かけられるようになることが今の私の夢です。

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